1.乗り過ごす

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1.乗り過ごす

 全ての仕事が終わり、 いざ帰らんと思った矢先に上司に呼び止められた。  時刻は午後五時。  定時きっかりだ。 嫌な予感はしたが、 用事があるといえば、なんとかなるだろう。  そう、私には、 これから飲みに行く という、用事があるのだ。  だが、その考えは甘かった。 上司「これ、明日必要だからやっといて。  一番仕事出来るし、どうせ暇でしょ。」 朝門「あー、えーとー、…」  瞬時に後ろ振り返り、気持ちの整理に入る。  どうせ、暇とはなんだ、どうせとは。 心の中が黒くもやもやする。  だが、ここでそれを放出しては、 さらに面倒くさくなるぞ。  黒いもやをぐっと丸めるように、 自分を鎮める。  ここは、 大人としての正しい断り方をしよう。 上司「おーい、どうした??」  上司が呼んでいる。  申し訳なさそうな表情をつくって、 朝門「本当に申し訳無いのですが、    今日は用事が…」 上司「うまくやれば、    早く終わるから!    じゃ、頼んだ!!」 朝門「え!?あ、だから…!」  私が向き直った時には、 荷物を持って、 デスクから少し離れた場所に待機していた。 上司はそこから、 脱兎のごとく、 職場から出て行ってしまった。 朝倉「……。    拒否権ないじゃないですか…。」  ああ、  今日もまた、  残業になってしまった。
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