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「葉月」
まるで愛しい人に語りかけるよう。
だけど悲しいかな、わたしたちはただ身体でつながっているだけ。そこに愛は存在しない。
混沌とした意識のなかでも、そのことだけはしっかりと自覚していた。
「リク、もっと激しくして」
やさしくしないで。そんな切なそうな目をしないで。わたしにはやさしくされる資格はないのだから。
わたしはリクと離れるのが怖かった。一緒にいられる方法を考えていたら、これが最良の方法だと思ったの。
最低なの。身体のつながりで引き留めてしまう自分が情けない。
でもわかってほしい。中途半端な気持ちで抱かれているのではないことを。リクはただの気まぐれでも、わたしは決してそうじゃない。わたしなりに重い決意を持ってのことだから。
「葉月、やばい。すごく気持ちいい」
「わたしもだよ」
奥に到達する瞬間、引き抜く瞬間、ひとつひとつを感じながら、熱い身体を抱きしめ合った。熱い空気に淫らさが混ざり、この世のものとは思えない空間はたとえるなら“楽園”。
「リク……」
お願い、なにもかも忘れさせて。この瞬間だけでいい。
わたしを救って──。
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