Episode3『楽園-ベッド・イン-』

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「葉月」  まるで愛しい人に語りかけるよう。  だけど悲しいかな、わたしたちはただ身体でつながっているだけ。そこに愛は存在しない。  混沌(こんとん)とした意識のなかでも、そのことだけはしっかりと自覚していた。 「リク、もっと激しくして」  やさしくしないで。そんな切なそうな目をしないで。わたしにはやさしくされる資格はないのだから。  わたしはリクと離れるのが怖かった。一緒にいられる方法を考えていたら、これが最良の方法だと思ったの。  最低なの。身体のつながりで引き留めてしまう自分が情けない。  でもわかってほしい。中途半端な気持ちで抱かれているのではないことを。リクはただの気まぐれでも、わたしは決してそうじゃない。わたしなりに重い決意を持ってのことだから。 「葉月、やばい。すごく気持ちいい」 「わたしもだよ」  奥に到達する瞬間、引き抜く瞬間、ひとつひとつを感じながら、熱い身体を抱きしめ合った。熱い空気に淫らさが混ざり、この世のものとは思えない空間はたとえるなら“楽園”。 「リク……」  お願い、なにもかも忘れさせて。この瞬間だけでいい。  わたしを救って──。
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