1143人が本棚に入れています
本棚に追加
だいたいリクはどうしてわたしをこんなに甘やかしてくれるのだろう。
そして、わたしはリクになにを求めているのだろう。過去のつらい思い出に引きずられ、それを身体でなぐさめてもらって、それでよかったの?
「なに考えてる?」
リクがわたしの冷たくなった肩を抱く。もう片方の手が持っていた空のシャンパングラスを抜き取った。
「この部屋にいると、仕事なんてしたくなくなるなあと思って」
敏感なリクにどこまで嘘が通じるかわからないけれど、一応そう答えた。
「そんな場所を会社にした俺によく言えるな」
「ああ、そっか。でも、あの部屋は仕事がはかどりそうだよ。リク、いい趣味してるね」
「てか、本当にそれだけ?」
「それだけだよ」
「ふーん……」
リクはそれ以上、追及することはなかった。相変わらず肩を抱いているだけ。
だけど触れられている手のひらからは安心感が伝わってくる。あたたかくて、やさしい。
最初のコメントを投稿しよう!