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「同じ事務職でも、総務部じゃなくて、営業部とかバリバリ働いている男性社員がいるような部署で鍛えてもらいたかったな」
「総務部は会社の心臓部だぞ。むしろ社内で一番重要と言っていい」
「生産性のない部署なのに?」
「でもなくなったら会社は成り立たない」
それはそうなのだろうけれど。
ランクの低い大学出身のわたしは、それだけでもコンプレックス。自分の代わりなんていくらでもいることを自覚しているから、ときどき不安になる。わたしはそこにいていいのだろうかと。
「やっぱり営業や技術職の人たちはすごいなって思うよ。秘書課の人たちなんて、そりゃあ優雅そのものだもん。社長秘書っていう響きもいいよね。いいなあ、憧れる」
キスをしようとしているリクに笑いかけると、リクがまっすぐに見つめてきた。
「葉月は社長秘書になりたいの?」
「そうだよね。地味なわたしじゃ似合わないよね」
「そうじゃなくて。会社の重役っていうと、頭が固くて気難しいオヤジとか、平気でセクハラしてくるイメージだから。葉月が秘書になったら心配になる」
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