初花染めの色深く

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「なにを調査して欲しいんですか?」 俺は事務所と住居スペースを区切る本棚の横に腕組みをしてもたれかかり、尋ねた。 「…妹が、ストーカーの被害にあっている。近くの交番に捕まえてほしいとお願いしたが、つきまとっているだけでは捕まえられないと言われてな。代わりにここを紹介されたから来たが…正直、信用していいのか迷っていますよ」 探偵の勘も時には外れる。志野が名刺を渡したのはこの男のようだ。 「信用できるかはそちらで判断してください。見ての通りうちは小さな事務所ですし、浮気調査が専門ですから」 「…たとえば、そのストーカーをしている男がどこのどいつか調べられるだろうか?」 「調べられなくはないですよ。ただ、必然的に妹さんを尾行することになります。信用されてないんじゃこちらもストーカー行為とかわりませんね」 男が難しい顔で考え込んでいる間に俺は本棚の側を離れてコーヒーを淹れる準備をした。
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