初花染めの色深く

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二十一歳。大学生。一人暮らし。アルバイトはカラオケ店。どこにでもいる普通の女子大生。 榛から聞いた裕子の情報をまとめていると、いつの間にか夕方の七時半を過ぎていた。 「おっと、もうこんな時間か」 俺はデータを保存し、元太との約束を守るべく雀荘九龍へ出かけた。 * 「待て待て」 ミックスサンドを手に持ったまま志野が俺の回想を遮る。 「なんだよ」 「どこから話す気だ、結果だけでいいぞ」 「はぁあ、大事なのは結果より過程だって中学んときのあの、なんだ、名前忘れたけどなんとか先生も言ってただろ」 「そんな昔のこと覚えてないよ。それより、お前が寝不足なのはもしかして麻雀のせいか?」 「…だとしたら?」 「あー無駄な心配させんなよ、徹夜で張り込みでもしてたのかと思ったじゃねえか」 「勘違いするのが悪い」 それまで傍観者的に会話を聞いていた友利が、「それで…ストーカーの素性はわかったんですか?」と聞いてくる。
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