初花染めの色深く

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結果だけ知りたいなら簡単なもんだ。「いなかったよ」と俺は二人が望んだ答えを簡潔に教えてやった。 「いなかった?」 志野と友利は顔を見合わせている。 「ストーカーはいませんでした。ハイ、おしまい」 「説明しろよ、」とのたまう志野の携帯電話が鳴る。 「あ。悪い、嫁だ…ちょっと出る」 志野は「もしもし」と携帯電話を耳に当てながら席を立ち店の外へ出て行った。 説明する必要が無くなったので俺は心置きなくサンドウィッチにかぶりつく。 「やっぱりからしマヨネーズだよなァ」 とか、つぶやいてしまったのは友利と二人残され無言が気まずくて気を遣ったからではない。一人暮らしが長いと、独り言が多くなるのだ。 「…ストーカーいなかったんですね」 「うん。そういや、榛とどういう知り合いなわけ?同級生?」 「そうです。報告はしたんですか?」 「まだ、これから。どんな奴だった?」 「…同級生ってだけで仲が良かったわけじゃないのでよく知らないんですけど」
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