初花染めの色深く

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「二日はまともに寝てねえからな」 説明する前に用件を理解したらしい志野は表情を引き締める。 「もうすぐ交代だから、話は後でもいいか?」 「もちろん。な、ちょっと寝かして」 「仮眠室使っていいぞ」 「さーんきゅ」 張り詰めていた気が緩むと遠慮なく欠伸がでた。 「ふあぁあぁ、あ。そうだ、友利に嫌われたじゃねえか。どっちかっつーと、お前が悪いのに」 今日の青空と同じく、憎たらしい爽やかさで志野が笑う。 「安心しろ、もとから好かれてねえよ」 「へいへい」 嫌われ役は慣れている。私立探偵なんて、胡散臭い職業をしていて好かれるわけがない。 仮眠室の薄い布団に寝転び、俺はしばしの休息を得た。 * どこから話そうか。取り敢えず、友利逸生(ともり いっせい)が俺を毛嫌いする理由からにしようか。 それはまだ憂鬱な雨が降り続いていた夜のこと。 浮気旦那の素行調査を終えた俺は、携帯電話に志野からの着信があることに気づいた。
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