192人が本棚に入れています
本棚に追加
「二日はまともに寝てねえからな」
説明する前に用件を理解したらしい志野は表情を引き締める。
「もうすぐ交代だから、話は後でもいいか?」
「もちろん。な、ちょっと寝かして」
「仮眠室使っていいぞ」
「さーんきゅ」
張り詰めていた気が緩むと遠慮なく欠伸がでた。
「ふあぁあぁ、あ。そうだ、友利に嫌われたじゃねえか。どっちかっつーと、お前が悪いのに」
今日の青空と同じく、憎たらしい爽やかさで志野が笑う。
「安心しろ、もとから好かれてねえよ」
「へいへい」
嫌われ役は慣れている。私立探偵なんて、胡散臭い職業をしていて好かれるわけがない。
仮眠室の薄い布団に寝転び、俺はしばしの休息を得た。
*
どこから話そうか。取り敢えず、友利逸生が俺を毛嫌いする理由からにしようか。
それはまだ憂鬱な雨が降り続いていた夜のこと。
浮気旦那の素行調査を終えた俺は、携帯電話に志野からの着信があることに気づいた。
最初のコメントを投稿しよう!