初花染めの色深く

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友利は仮眠中だと言ったから安心していたのに。 給湯室で志野の一物を尻に咥えているところをがっつり見られたのだ。 たぶん物音で起きてきたのだろう寝ぼけた顔が、じわじわと目の前の行為を認識し強張っていく過程を俺は冷静に観察した。 志野も詰めが甘いよな、と思った。無茶な話にのった俺も俺だけど。 手から滑り落ちたガラスのコップが砕け散るのを見守るしかないような感覚。 見られたのなら仕方ない、漂う緊張感をどうにかしようと考えた。 「えーっと…お前もやる?」 ただ、ジョークのセンスがなかった。場を和ませようとして言ったつもりが失敗。 志野がため息をつき、「まいったな、」と言って困り顔をする。 「こいつは悪くないんだ。誘ったのは俺だから」 外面の良さは折り紙付きの男が自ら職務中にいかがわしいことをするなんて、どこの誰が信じるだろう。 本当のことなのに誠意のこもった声色で意味深すぎるフォローをされては、まるで俺を庇っているみたいだ。
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