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だからまあ、友利の誤解くらい俺で被ってやってもいい。幸い俺には失う信頼もないわけだし。
*
「…さん、沼津さん。駄目です、起きません」
「デコピンきめてやれ」
「えぇ」
「お前がやらねえなら俺がしてやるよ」
「所長のは冗談じゃすまないからなぁ」
悪巧みの気配で目を覚ます。
「ぐずぐずしてっから起きちまったじゃねえか」
志野と友利、それから所長の梅田さんが顔を揃えていた。
俺はもそもそと上半身を起こす。
「腑抜けた面だな。気合い入れろ、」
分厚い手で力任せに肩をたたかれる。俺が痛がると梅田さんは満足そうに笑った。
「目ェ覚めたか?相変わらず不健康そうな顔して、栄養あるモン食ってねえんだろ」
「そーなんすよ。そこの部下に、たまには奢れって言ってください」
「たまになら奢ってるじゃねえか。ほら、仕事の邪魔だからとっとと出るぞ」
「ぬああ」と伸びをして立ち上がる。足がふらつき、よろけた身体を友利が支えてくれた。
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