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「偶然、梅田さんに会っただけだから。ん、」とリンゴを投げて渡す。
「ありがとうございます」
梅田さんが片付けられている折りたたみイスを拡げて座るから、俺もそれに習った。
「せっかくだからなんか食うか」
「それ梅田さんが言うんですか」
「一人じゃ食べきれないんでぜひどうぞ」
友利はそう言って、梅田さんが持ってきた籠のフルーツの中からマスカットを取り出す。
「果物ナイフないんで、これなら食べられますかね。洗います?」
「平気平気、死にゃしない」
梅田さんは一粒摘んで口に放り込む。
「皮…」
「食えるやつだから」
「洗ってきますよ」
「病室の入口に洗面台があります。お皿これ使いますか」
「ナンダヨォ」と言う梅田さんを無視して俺は皿とマスカットを掴むとその場を離れた。
離れても梅田さんの声はよく聞こえた。「洗濯物はどうしてるんだ」とか「美人のナースはいるか」とか。
…さすがに友利の声は聞こえないな。
そのうち軽快なメロディーが流れ、「おっしまった、」と慌てる梅田さん。
「あー署からだわ、ちょっと外すな」
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