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拗ねたような物言いが珍しく思わず視線を向けると熱に浮かされた眼差しが俺をとらえた。
…なんつー顔してんだ。そういうのは俺じゃなく、別の誰かのためにとっておけよ。
「階段から落ちたときに頭も打ったんじゃねえの」
「…そうかもしれません」
どたどたと足音が聞こえる。俺はハッとして落ちていたマスカットを拾い上げた。
「すまんすまん、急用でこれから署に行かなきゃならん」
「忙しい時期にすみません」
「本当だよ、優秀な部下がいなくて困ってんだ。早く復帰してくれよ」
「はい」
「沼津はもう少しいてやるか?」
「いえ!俺も帰ります」
「ここ暑いな」
「そうですか?」
自分のせいで温度が上がっていそうで、「クーラーの効きが悪いんですよ」と必要のない言い訳をしてみたが、梅田さんの興味はすでにマスカットへ移っていた。
数粒を口へ運びそれでも足りないらしく片手いっぱいに実を摘むと、「じゃあな!」と先を急ぐ。
俺も慌ただしく席を立ったが、「また来てくれますか」という声に引き止められた。
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