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「すぐ退院するんだろ」
「じゃあ快気祝いしてください」
「自分で言うな、偉そうに」
これから、なにか変わるのだろうか。
梅田さんの足音を追いかけながら病院の自動ドアを抜けると、再び外は地獄の釜状態で。室内になれた身体に熱気がまとわりつき、たまらず目眩を覚える。
「日差しが殺人的ですねェ」
梅田さんは罪人の苦役を喜ぶ鬼のように、「生きてるって感じがするな!」と言った。
*
友利の足から装具が外れるまでに一ヶ月かかった。夏の盛りを過ぎてはいたが俺は快気祝いの場所にビアガーデンを選んだ。
安くて騒がしくて色気がなくて、いいことづくめだ。
ビールをぐいぐいあおりながら、リハビリの様子なんかを聞いた。
「まだ本当には走れないんですけど」
わざわざ快気祝いを二人でしていることを、友利はどう思っているのだろう。俺はどうするつもりなのだろう。
会話はどこか上の空で。
「事務所にうまいラム酒があるんだけど寄ってく?」
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