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明らかな作り笑顔。
何年一緒にいると思ってんだ。
どんなに虚勢を張っても、俺にはお前の笑顔は
不安でたまりませんって言ってるようにしか見えなかったよ。
だけどソレを指摘したところで、これ以上俺に何ができる。
前を向いて頑張ろうとしてる瑞季の気持ちを汲んでやるのが
幼馴染として、親友として唯一できることなんじゃないのか。
そうは思うけど。
思うけど。
「さびしーじゃん、そんなの」
寝顔に話し掛ける。
「俺はホントは同じ高校に行きたかったんだぞ。
お前があの高校受けるって教えてくれてたら、もっと勉強頑張って
無理してでも受けたのに。
お前は多分、自分が俺の負担になってるとか思って
俺と離れようとか考えてたんだろうけど、それは違うって。
お前がいないと不安になるのは、俺だって同じなんだからな」
いつも隣にいるのが当たり前だったから。
「お前が俺以外のやつと、楽しそうにしてるの
想像しただけでなんか腹立つし」
俺に向ける笑顔を、他のヤツにも向けると思うとなんかムカつく。
「お前の居場所は俺の隣だって、言ったじゃん」
変だ、俺。
姉ちゃんが入れてくれたジュースに、アルコールが入ってたんじゃねーか?
そう思うくらい、気持ちが変だ。
無邪気に眠る、幼馴染の寝顔に有り得ない気持ちが沸々と湧き上がってくる。
「俺は、俺はお前が……」
言葉にする前に、感情が止められなくなって
気が付けば俺は、目の前のその唇にキスをしてた。
――――これが数ヶ月前の俺の過ち。
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