今はまだ聞こえなくていい

3/14
前へ
/25ページ
次へ
「これで解けたと思うけど。解ったか?」 真剣に、俺がノートに書く答えを見ていた瑞季の肩を叩いて尋ねると、 顔を上げ可愛い笑顔で「うん」とうなずく瑞季。 その笑顔にまた俺の鼓動は反応する。 乙女かっつーの。 「他にわかんねーとこはないのか?」 ドキドキに気付かれないように、必要以上にぶっきらぼうに尋ねた俺に 一瞬、瑞季の顔が曇ったように見えた気がした。 だけどすぐにそれはいつもの笑顔に戻る。 『もうないよ。ずっと解けなかった問題が解けてすっきりした。  やっぱり正樹はスゴイね。ありがとう』 「まあな。他の教科はどうやってもお前に勝てなかったけど  数学だけは負けたことなかったもんな。  これからも解らない問題があったらいつでも聞きに来いや。ふはははは」 あ。 いつでも来られたら困るのは俺じゃん。 調子に乗って行ってしまった言葉を後悔したけど それから暫く取り留めのない会話を交わしている間に 待てよ、 変に会わないようにしてたから、余計に意識しちゃってたんじゃね? だってホラ、今の俺って普通に瑞季と向き合えてるじゃん。 と思い始める自分がいた。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

83人が本棚に入れています
本棚に追加