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2学期の期末テストを3日後に控えた金曜の夜。
隣に住む幼馴染の瑞季が、数学を教えて欲しいと
夕飯が終わった頃、教科書と参考書を抱えてウチにやって来た。
小学校の頃から、いつも一緒に宿題をしてきた流れのまま
瑞季は、テスト前になるといつも俺と一緒に勉強をしようと言っていた。
けど、今年別々の高校に入ってからこんな風に瑞季が訪ねて来たのは初めてのことだったし
こうやって向き合う事も超久しぶりのことで、正直戸惑った。
『ダメ?』
玄関先で向き合ったまま、返事を迷っている俺の顔を
背の低い瑞季が下から覗き見るようにして問いかけてくる。
「ああ、いいよ。上がれよ」
仕方なく、ぶっきらぼうに俺が答えると
まるで尻尾を振る小型犬みたいに嬉しそうに笑顔になった。
その無邪気な笑顔を見ると、俺は更に複雑な気持ち……っていうか
後ろめたい気持ちになる。
俺を幼馴染として信用しきっている無邪気なコイツに俺は……
数ヶ月前、瑞季と俺の部屋で一緒に過ごした日の出来事が一瞬脳裏に過ぎったけど
僅かに頭を振り、その記憶をかき消した。
道で偶然に会っても、挨拶くらいしか交わせない状況にしてしまった
幼馴染は知らない、俺の悪行の記憶を。
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