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『避けてるよね、僕の事。僕、なんかした?
気に障ることしたんだったら、はっきり言って欲しい』
「別に、避けてなんかねーし。バイト、ホラ、バイト始めたから
忙しくって。そうだよ、バイトがさ。
てかさ、あ、会えなくて寂しいとか言うな。乙女かお前は。
で、どの問題がわかんねーの?」
寂しそうな子犬みたいな目で見つめてくる視線から
さりげなく逃げつつ、俺は瑞季が机の上に置いた数学の問題集を乱暴に手に取り
ページをパラパラとめくる。
俺が瑞季を避けている理由を知ったら
きっと今度は瑞季の方が俺を避けるよ。
言えるわけないし。
俺の言い訳にまだ納得してない、みたいな表情を浮かべながらも
瑞季は俺の手から問題集を取り、ページをめくって証明問題を指差した。
寂しいとか、一緒にいたいとか
いつだって瑞季はそんな言葉を普通に言う。
その度俺の胸がどんだけぎゅってなってるのか
こいつは絶対に気付いてないし。
避けてる理由だって、絶対に言えない。
男の俺が
ただの幼馴染の俺が
寝てるお前にこっそりキスしたなんて、言えるわけない。
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