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あれは、高校の合格発表があった日のこと。
俺も瑞季も志望校に受かり
合格祝いを一緒にしようと母ちゃんが言い出して
その日もひとりで家にいた瑞季を呼んで、家は完全宴会状態になった。
俺と瑞季以外、全員酔っ払って
宴会の途中から姉ちゃん達にとっ捕まった瑞季は、
帰るに帰れなくなって結局その日泊まることになった。
みんなで散々騒いだ後
リビングのソファーで泥酔して眠る二人の姉ちゃんに
両脇を固められ困っている瑞季の手を引いて
爆睡する両親と姉ちゃん達を起こさないよう気をつけながら
とりあえず俺の部屋へと連れて行った。
「ごめんな。みんな酔うとシツコイから。
風呂、入って来るか?着替え貸すし」
『うん、入る。でも正樹が先に入って来て。ちょっと休みたい』
「え、具合悪いのか?」
『ううん、そんなんじゃなくて。夕べは緊張して眠れなくて、寝不足気味だから
すごく眠くなってきた』
気が付けば時計は深夜1時を指している。
終わったことは気にしない、なるようになれ的な考えの俺とは正反対の
神経質で心配性の瑞季はきっと、合格発表が気になって夕べは眠れなかったに違いない。
「バカだな。眠いんなら上手いこと言って帰ればよかったのに」
そうは言ったものの、瑞季の性格を考えればそんなことはできないのは明白で。
俺が早く気付いて帰してやればよかったと後悔して
もっかいごめんな、って言おうとした時
『帰りたくなかったし』
微笑む瑞季がそう言ってじっと俺を見た。
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