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「あ? 『なんで』って、お前、キス顔したまま動かねぇし。
いい加減、だるくなったからに決まってんだろ」
「キッ、キス顔って……チカ、そんなカオしてないもん!
それに、『だるくなったから』とか、ひど……」
「自覚してなかったのか?」
「ひゃっ!」
残ったポッキーをポリポリ食べながら抗議したチカの肩にいっちゃんの大きな手が乗り、そのままグイッと前に引き寄せられた。
つまり、いっちゃんの胸元に密着。
「いっ、いっちゃん!?」
「頬染めて、いかにも期待しまくってますって、キス顔だったぞ?
俺としたことが、迂闊にもそそられた」
ちっ、近い。カオ、近いよ。
おまけに、甘めの中低音が色気たっぷりにチカの鼓膜に突き刺さってくる。
やめてよ。
『フェロモンボンバー』、『歩く理性破壊魔』って噂を体現してる、その声。
いっちゃんのことを大好きなチカには凶器そのものなんだってば。
耳、溶けちゃうっ。
「俺も、鬼じゃねぇからな。
こんなポッキーゲームみてぇな面倒くせぇ真似しなくても、お前相手ならキスくらい幾らでもヤッてやれるぞ。
ほら、さっきみてぇに目ぇ瞑れ」
「えっ? え、ちょっ……えぇっ?」
「ん? 瞑んねぇの? んじゃ、開けたまんまでもいいけど。
ついでに、身体の力も抜いて口も開けろよ」
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