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アオは唇を引き締めると、小さくうなずいた。こんなところで何をしているの? とマリアに聞かれ、ただ散歩をしていたのだとアオは答える。
「おにいちゃんが言ってた! 弟もいるんだって。いいな、わたしも弟がほしかったの。こんど一緒に遊ぶの、わたしもまぜてくれる?」
年齢にそぐわない幼い口調。にこにこと笑う少女に、アオは再び強い違和感を覚えた。
・・・・・・なんだ?
「・・・・・・マリアはここで何をしてるんだ?」
アオは慎重に訊ねる。マリアは小さく首をかしげた。
「バラに肥料をあげようと思って」
アオは驚いた。
「この庭はマリアが手入れをしているのか?」
「そうよ? 前は庭師のアンリの手伝いしかできなかったけど、最近ではだいぶまかされるようになったの」
マリアが自慢するように胸を張ったそのときだった。
「マリア!」
庭の入り口から、シオンが現れた。シオンはマリアと一緒にいるアオを見てわずかに眉を顰めると、すぐにアオなんてまるでこの場にいないみたいに素通りし、少女の腕をとった。
「今朝、熱が下がったばかりだろう。部屋にいないって、カイルが探してたぞ。手入れはアンリに任せればいい。さ、部屋に戻るぞ」
「でもシオン! アンリはもうずっと腰の調子が悪いって・・・・・・。わたしならもう元気なのに!」
少女はシオンの手を振り払おうとするが、シオンはそれを許さなかった。
「ほら。いいから戻るぞ」
「やー・・・・・・!」
「あ、あのさ・・・・・・」
いきなり口を挟んだアオに、シオンと少女が振り向く。いかにも部外者がいったい何だという視線に、アオは頬が熱くなった。
「お、俺で何かできることがあるなら、手伝うけど・・・・・・」
「おまえには関係な・・・・・・」
「ほんとに!?」
アオの言葉を退けようとしたシオンの言葉を、マリアが遮った。期待のこもった瞳を向けるマリアと、反対に渋面をつくったシオンに見つめられて、アオはすでに前言を撤回したくなっていた。
「俺にできるかわからないけど、やることさえ指示してくれれば・・・・・・」
「それで充分! ・・・・・・シオン?」
アリアがシオンを振り向く。シオンはため息を吐くと、アオを見た。自分を見つめるシオンの瞳は何か言いたいことでもありそうで、アオは気になった。
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