2076人が本棚に入れています
本棚に追加
アオは鶏のガラで出汁をとると、スープを作った。少ない具は、なるべくリコの皿に入れてやる。リコはそれを見ると、首をかしげた。自分の皿からじゃがいもをスプーンですくいとって、アオの皿に入れた。
「あっ、こら!」
アオが咎めると、リコはまるでイタズラが見つかった子どものように肩をすくめ、ふふっと笑った。
「だってアオのほうが働いて疲れてるもの」
「俺はいーんだよ。そんなに腹は空いてない」
嘘だった。本当は、腹の虫がぐうぐう鳴くほど、お腹がすいていた。アオは自分の皿からジャガイモをすくいとると、リコの皿に戻した。
「あー、もう・・・・・・」
「いいからしっかり食べな」
手を伸ばし、テーブル越しに弟の髪をくしゃっとかき混ぜると、リコは諦めたように素直にスープを口へ運んだ。
夕食を食べ終え、アオがキッチンで後片付けをしていると、とっくにベッドで休んだはずのリコが立っていた。
「どうした?」
洗い物の手を止め、布巾で濡れた手を拭きながら、振り向こうとしたそのとき、背後からきゅっと抱きしめられた。
「・・・・・・眠れないか?」
アオは顔だけを後ろにいるリコのほうに向けると、腰にまわされた手をぽんぽん、と軽くたたいた。そうしていると、小さかったころのリコの姿が思い出された。
ーーねえ、アオ。ぼくたち、血が繋がってないって、ほんとうの家族じゃないってほんと?
ーーねえ、アオ。お父さんたちが死んじゃったってほんと? ぼくたち、もう一緒に暮らせないんだって。どうして? どうしてこれから先もずっとアオと一緒にいられないの?
ーーぼくね、ぼく、アオがこの世でいちばん大好きだよ。ずっとずっと大好きだよ。
リコはアオの背中に顔を埋めるようにして甘えると、ふるふるっと頭を振った。
「ねえ、アオ? 俺もね、アオが一番大事だよ。だからアオにばかりつらい思いはさせたくない。俺だってアオのことが守りたい」
何かに感づいているのか、声に不安を滲ませるリコに、アオはそうと気づかれないようそっと息を吐き出した。
最初のコメントを投稿しよう!