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どっと涙があふれた。
よりによってそんな嘘をつくなんてひどい。
アオはますます身体を強ばらせた。全力でシオンの腕の中から逃げようとする。
「ひどい? 何がひどいだよ?」
頭を振りながら、ひどい、ひどいと繰り返すアオに、さすがに心外だと思ったのか、シオンの声にも険が混じる。
アオは、シオンが本気で言っているとは思えなかった。責任感? 同情心? 俺がつがいの相手だから? それとも妊娠したかもしれないと聞いたからだろうか。
そんなのは嫌だ。こんなにシオンのことを好きになってしまったいまでは、そんなのはもう堪えられそうになかった。
アオは泣きながらシオンを見つめた。いつもきれいだと密かに思っていた青い瞳がアオだけを見ている。その瞳を見ていたら、アオの口からぽろっと言葉が零れ落ちた。これまで言えなかったアオの本心が。
「あんたが好きだ・・・・・・。同情なんかじゃ・・・・・・嫌・・・・・・」
その言葉を最後まで言わないうちに、封じ込めるようにシオンにキスをされる。最初は唇に。そして、こめかみに。
「・・・・・・好きだ。アオ。同情なんかじゃない。お前が好きだ」
「ん、あっ・・・・・・シオン・・・・・・」
大きな手で包み込まれるように、後頭部をぐしゃりとかき混ぜられた。
「愛してる・・・・・・」
シオンの瞳は、嘘を言っているようには思えなかった。
アオの胸に初めて小さな明かりが灯る。それは吹けば消えてしまいそうなほどはかない光だけれど、ひょっとしたらと信じたくなる。
本当に? シオンが俺のこと本当に・・・・・・?
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