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エピローグ
「シオーン、準備ができたか?」
ノックをして、アオはシオンの部屋に入る。
「ああ。ーーちょっと待て」
出かける準備をしていたシオンは、先に部屋を出ようとしていたアオを引き止めると、アオの首からぐるりとマフラーを巻いた。
「ああ? マフラーなんていいよ」
そんなに寒くないから必要ないと、シオンが巻いてくれたマフラーをアオはとろうとするが、すぐにダメだと言われてしまう。アオは腕を組むと、うーん、とシオンを見た。
「なあ、お前ってちょっと過保護じゃね?」
「いまは大事な時期だから風邪を引いたら大変だ」
せっかくほどいたマフラーを再び巻かれ、ちゅっと頬にキスされる。アオはわずかに頬を染めた。
あの後、シオンに連れていかれた病院で、アオは妊娠六週目に入っていることがわかった。つまりは、あの体調の悪さは悪阻だったわけだ。そのままさらわれるように屋敷に連れ戻されたアオだったが、実は花屋の仕事をめぐって、シオンとひと悶着あった。当然のことのように仕事を続けようとしたアオは、部屋に閉じこめようとしたシオンに反発して、屋敷を出ようとした。渋々折れたのは、シオンのほうだ。その代わり、花屋の行き帰りはシオンが一緒についてくることと、例え彼の仕事が忙しいときでも、必ず誰かを迎えに呼ぶことを了承させられた。それから、万が一体調が悪いときは、無理をせず休むことも。
シオンはセツのことも警戒しているようで、アオと一緒に働くことを内心はよく思っていないようだった。
ーーあいつはお前のことが好きだ。
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