2076人が本棚に入れています
本棚に追加
「お前に聞いている。いまの状況は、お前の意思か?」
「そんなわけあるか!」
アオが食ってかかってきたのが予想外だったのか、男の瞳に初めて何か感情の色が浮かんだ。
「おい! 無視すんなよ!」
「お前には聞いてない」
「何っ!?」
アルファの男がすっと視線を合わせると、アオの腕をつかんでいた男は見るからに怯んだようすだった。
「シオン」
そのとき、アオはアルファの男以外にも、彼の背後にもうひとり別の男がいたことに気がついた。
ひどく大きな男だった。アルファの男も背は高いが、それよりも遙かに高い。
彼もまたアルファだ、とアオは気がついた。厳つい風貌は彼がその場にいるだけで威圧感があり、それまで気づかなかったことが不思議なくらいだ。
こんなに間近にアルファを、しかも同時にふたりも見るなんて・・・・・・。
わずかに怯んだ気持ちを見透かされたように、大男はアオを見て目を細めた。
「見たところ、その子は何か犯罪に巻き込まれたようすですね。あなたたち、どうしますか? 騒ぎにしたいですか?」
アオを襲っていた男たちは、ごく普通のベータだ。ふたりのアルファの登場は、彼らにとって明らかに分が悪かった。アルファの男たちが身に纏うオーラは、最初から勝負にすらなっていない。
「ちっ。いくぞ!」
男たちは腹立たしそうに舌打ちすると、逃げるようにその場から去った。
「あ・・・・・・」
助かったのか・・・・・・?
安心した瞬間、緊張が解けた。アオは、その場にへたり込んだ。
「大丈夫ですか?」
ーーあ・・・・・・。
最初のコメントを投稿しよう!