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「お前に聞いている。いまの状況は、お前の意思か?」 「そんなわけあるか!」  アオが食ってかかってきたのが予想外だったのか、男の瞳に初めて何か感情の色が浮かんだ。 「おい! 無視すんなよ!」 「お前には聞いてない」 「何っ!?」  アルファの男がすっと視線を合わせると、アオの腕をつかんでいた男は見るからに怯んだようすだった。 「シオン」  そのとき、アオはアルファの男以外にも、彼の背後にもうひとり別の男がいたことに気がついた。  ひどく大きな男だった。アルファの男も背は高いが、それよりも遙かに高い。  彼もまたアルファだ、とアオは気がついた。厳つい風貌は彼がその場にいるだけで威圧感があり、それまで気づかなかったことが不思議なくらいだ。  こんなに間近にアルファを、しかも同時にふたりも見るなんて・・・・・・。  わずかに怯んだ気持ちを見透かされたように、大男はアオを見て目を細めた。 「見たところ、その子は何か犯罪に巻き込まれたようすですね。あなたたち、どうしますか? 騒ぎにしたいですか?」  アオを襲っていた男たちは、ごく普通のベータだ。ふたりのアルファの登場は、彼らにとって明らかに分が悪かった。アルファの男たちが身に纏うオーラは、最初から勝負にすらなっていない。 「ちっ。いくぞ!」  男たちは腹立たしそうに舌打ちすると、逃げるようにその場から去った。 「あ・・・・・・」  助かったのか・・・・・・?  安心した瞬間、緊張が解けた。アオは、その場にへたり込んだ。 「大丈夫ですか?」  ーーあ・・・・・・。
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