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「あんたに金を恵んでもらう理由はない」
アオは、シオンが放った金をずいと前に突き出した。シオンはアオの突き出した金を受け取ると、
「愚かだな」
と呟いた。
「え?」
アオは、一瞬何を言われたのかわからなかった。おそらくそれはアオの表情にも出ていたのだろう。シオンは面倒くさそうな表情を浮かべると、それでも言葉を続けた。
「だから愚かだと言ったんだ。どんな理由の金だろうと、金は金だ。お前はこれが必要だったんじゃないのか? それをプライドばっかりが高くて、また身体を売るのか? まあ、お前がどんな危険な目に遭おうとも、俺には関係ないがな」
「シオン」
大男がシオンを窘めた。
明らかな侮蔑を含んだシオンの視線に、アオの胸はぎゅっと締めつけられた。彼の瞳は、アオが本当にどうなっても自分には関係がないと告げていた。
それはその通りだ。シオンは何も間違ったことは言っていない。言ってはいないけれど・・・・・・。
アオは、ぎゅっと胸が痛んだ。
「あ、あんたに何がわかるんだよ!」
それが単なるアオの八つ当たりだということはわかっていた。彼らはただ偶然通りかかったにすぎない。それどこか、アオが危ない目に遭いそうなところを助けてくれた。けれど、これまで散々虐げられ、傷ついてきた心が、アルファへのコンプレックスが、アオを引くに引けないところへ追いつめていた。
蔑まされた目で見られることはとっくに慣れている。それなのになぜだろう、シオンにそんな目で見られるだけで、胸が苦しくなって、泣きたいような気持ちになるのは。
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