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どくん。
心臓が大きく音をたてる。あまりに大きな音に、アオは一瞬その音が、自分の耳の外で聞こえたのかと思った。
どくん。どくん・・・・・・。
鼓動が早鐘を打つ。ぐらりと目眩がした。体温が一気に上昇し、全身の汗が噴き出す。血が沸騰するようだ。
「お前まさか・・・・・・」
シオンが驚愕に満ちた顔で、アオを凝視する。
何? 何がまさかなんだよ?
そう訊ねたいのに、喉の奥が詰まったように、声が出ない。
「お前が”運命のつがい”だというのか?」
”運命のつがい”・・・・・・?
額に汗が滲む。まるで発情期がきたような身体の反応に、アオはシオンの言葉の意味を深く考えることができない。
「シオン、まさか彼が・・・・・・?」
「・・・・・・だとしても関係ない」
気が遠くなりそうな意識の中、ぼそぼそと彼らの話し声が聞こえてくる。何を話しているのかはわからないが、大男が焦っているのに比べて、シオンの声は苛立っているように感じられた。
何だよ、俺がいったい何をしたというんだよ。さっきからいったい何を言ってるんだ?
シオンが身動きするたびに、空気の流れが動き、花の匂いはますます強くなった。
頭の芯がぼうっと痺れる。
こんなの変だ。シオンのことなど何も知らないのに、身体をすり寄せたくなる。抱いてくれと縋りたくなる。
無意識のうちにシオンのほうに伸ばした手を、「触るな!」と振り払われた。
「何だよ、それ・・・・・・」
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