2080人が本棚に入れています
本棚に追加
突如倒れる前のことを思い出し、それまで靄がかかっていた意識がはっきりとした。アオは全身に警戒心を滲ませて、周囲の気配を窺った。部屋の中には、アオ以外誰かひとのいる気配はしなかった。この部屋の外はどんな風になっているのだろうか?
さっきの男たちにアオが連れ込まれたのは、薄汚いホテルの一室だ。自分がいまいる部屋のようすからしても、あの男たちに捕まったわけではないようだった。
そのとき、アオはいつも首に巻いているスカーフがなくなっていることに気がついた。急いで首の裏に手を滑らせるが、傷はついていなかった。アオはほっとした。いまさらながら、自分が見たこともないパジャマのようなものを着せられ、足の裏の傷も手当されていることに気がついた。
いったい誰が・・・・・・?
アオの脳裏に、ふたりのアルファの男が浮かんだ。
ひょっとしたら彼らが助けてくれたのだろうか?
アオはすぐに自分の考えを打ち消した。アオとあのふたりの男は無関係だ。助けてもらう理由は何もない。
すぐに危険が迫っているようには思えなかったが、状況がわからない以上、警戒心は解けなかった。あれからどれぐらいの時間が経過しただろう。
とりあえずはここから出ないと。
アオは軽く身体を動かしてみた。まだ頭痛と目眩は残っていたものの、なんとか逃げられそうだった。
アオはふかふかの枕に手をつくと、そっと身体を起こした。ベッドから降りようとしたところで、突然身体からすっと力が抜け、床に転がり落ちた。
「あっ!」
どさりと大きな音がした。アオが慌てて起き上がろうとしたとき、部屋のドアが開いて、背後に廊下の明かりを背負った見知らぬメイドらしき女が入ってきた。
「あ、あんた誰だよ!? ここはどこだ!?」
最初のコメントを投稿しよう!