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 目の奥がちくちくと痛んだ。どうしてだろう、こんなやつにどう思われたって構わないはずなのに、胸が痛くてたまらない。  アオたちの横では、使用人がてきぱきとベッドメイキングをすませている。シオンがいるせいか、さっきのようにアオに嫌がらせを言うこともない。代わりにこちらを見ることもなかった。どうやらアオの存在を空気のように扱うことに決めたらしい。  シオンはアオをベッドに寝かせると、間に物理的な距離をとって離れた。  再び、アオの胸はちくりと痛んだ。 「お前、ひょっとしたらもうすぐ発情期じゃないか」  苛々したようなシオンに訊かれ、アオはぎくりとした。発情期まではまだ一週間くらいあるはずだ。けれどシオンと一緒にいるときに感じる身体の違和感は、明らかに発情のそれと似ていた。 「薬は持っているのか?」  重ねて訊ねられ、アオはぐっと押し黙った。専門の機関に取りにいかなければと思いつつも、つい忙しくてその機会を逃していた。自分でも拗ねた子どものようだと思うが、都合の悪いことを言い当てられ、アオはふいと視線をそらした。  アオの表情に答えを見つけたのか、シオンが目を眇める。 「このバカが!」  シオンはアオを怒鳴りつけた。 「カイル」  それから、すぐ後ろに控えていた大男の名前を呼んだ。カイルは微かにうなずくと、何も言わず部屋から出ていった。あとにはアオとシオンのふたりが残された。  沈黙が落ちる。  シオンの瞳からは、彼が何を考えているのかわからなかった。  ふたりの間に流れる沈黙が気詰まりで、アオは視線を泳がせてしまう。  いったいこいつは何を考えているのだろう。  何も読みとれないシオンの瞳に、アオはそわそわと視線を泳がせてしまう。 「あ、あの、俺帰らなきゃ」
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