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 家では具合の悪いリコがアオの帰りを待っている。シオンは冷たい目でアオを見ると、ふん、とせせら笑った。 「帰ってどうする?」  アオはむっとした。シオンの態度に、バカにするような気配を感じたからだ。  アオが卑屈になっているだけかもしれないが、お前なんかを待っているやつなどいないだろうと言われているみたいで、ふつふつと反抗心が沸き上がる。 「・・・・・・あんたには関係ない」 「それでところ構わず発情して、他人に迷惑をかけるのか」  アオはカッとなった。胸の中にやり場のない怒りと、悲しい気持ちがあふれて、感情を押さえるのが難しくなる。 「・・・・・・あんたに何がわかるんだよ」  吐き捨てるように呟いて、そういえばこいつとこのやり取りをしたのは二度目だ、と気づいたら、おかしくもないのに笑いがこみ上げてきた。 「ああ、わかるわけないんだったな。アルファさまだもんな」 「何が言いたい?」  明らかに棘を含んだアオの言葉に、シオンが眉を(ひそ)める。 「別に。どうせあんたになんか言ったってわからない」  アオはふいっとそっぽを向いた。 「何!?」  そのとき、カイルが部屋に戻ってきた。これをと手渡されたものは、発情抑制剤が入った見覚えのある専用ケースだった。 「どうぞ。予備で置いてあるものです。この屋敷には私とシオンのほかにも、まだ数名のアルファがいるので、念のため持っておいていただけますか?」  屋敷にきてから、というよりは、ここ久しくリコ以外の人からやさしい言葉をかけられたことがなかったアオは、カイルの言葉にぽかんと口を開いた。素直にカイルからケースを受け取って、早口で「ありがと・・・・・・」と礼を述べる。そんなアオの態度に、シオンはむっとしたようだった。 「誰にでも媚を売るんじゃない」 「はっ!? 別に媚なんか売ってないだろ!」  思いもよらないことを言われ、アオはカッとなった。 「どうだか」 「・・・・・・っ!」
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