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 朝食がすむと、再びさきほどの使用人たちが、今度は片付けをするため部屋に入ってきた。アオたちの存在を無視したように、機械的に働く彼らからは、無言の非難の声が聞こえてきそうだ。  再び室内にアオたちだけしかいなくなると、カイルは居住まいを正した。カイルの緊張が伝わってくるように、アオもわずかに身構える。 「このまま戻ってどうするんですか? 仕事はあるんですか? この間みたいな目に遭ったらどうするつもりですか? いつも助けがくるとは限らないんですよ」 「カイル!」  アオが思わず声を張り上げると、カイルは「失礼」と呟いた。 「この間みたいなことって何のこと? 助けって?」  リコが敏感に反応するのを、何でもないから、とアオは言った。 「カイルと大事な話があるから少し黙ってて」 「アオ!」  アオがちらっと視線を向けると、リコはむっと黙り、しぶしぶとアオたちからは距離をとった。 「すみません・・・・・・」  申し訳なさそうに謝るカイルに、アオは頭を振った。かわいそうだけれど、いまはリコに構ってやれない。 「ここまでよくしてもらったのには感謝する。でも、正直言うと、なんでそこまで見知らぬ俺たちによくしてくれるのかわからない。ぶっちゃけ、何か裏があるんじゃないかと勘ぐっちまう。不幸なオメガなんて珍しいもんじゃないだろ? なんで俺たちなんだ?」  他人の親切を無条件に信じられるほど、これまでアオは恵まれた生活を送ってはいなかった。人間は必ずといっていいほど裏切る。何よりも自分がかわいい。オメガのひとりやふたりの存在なんて、ないに等しいというのが、世の中の真実だ。アオはこれまで嫌ってほど、身に染みてそのことを知っていた。  そしてアオにはリコがいる。何よりも大事にしなければいけないリコが。万が一、リコに危険が及ぶようなことだけはあってはいけなかった。それぐらいだったら誰に何を思われても、どんなに恩知らずだと罵られても、アオは構わなかった。
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