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腹を割って話すアオに、カイルは絶句したようだった。苦しそうな表情を浮かべると、
「それならせめて具合がよくなるまではこの屋敷に留まってもらえませんか?」
と告げた。
「なんでそこまで・・・・・・」
カイルは背後にいるリコを気にするそぶりを見せた。リコに聞こえないよう、声のトーンを落とす。
「彼は、リコは”つがい”についてどこまで知っていますか・・・・・・?」
「え?」
”つがい”・・・・・・?
思わずアオはリコを振り返った。
リコは心配そうな表情を浮かべながら、アオとカイルのやり取りを見守っている。そのようすを見ていたら、アオの心に迷いが生じた。確かにリコのことを思えば、二、三日だけでも屋敷に滞在させてもらえるのは、ありがたい話だった。
アオはぐっと唇を噛みしめた。
「・・・・・・で、でもあいつは、俺たちが屋敷に留まることをきっと望まないと思う」
青い宝石のような瞳を思い出して、アオの胸はずきんと痛んだ。
なぜだろう、あの男のことを考えるだけで、アオがこれまで意識的に捨ててきた、懐かしい気持ちを思い出す。感情を揺さぶられてしまう。
「シオンは構わないと思いますよ」
アオの迷いを見透かすように、カイルは言った。けれど、アオは決してそうは思えなかった。
気まずそうに顔を背けるアオには構わず、カイルはリコには聞こえないよう、アオの耳に素早くささやいた。
「後で大事な話があります。リコのいないところで少しだけ時間をいただけますか?」
「え?」
カイルは、内緒話をされてむっとしているリコを振り返った。
「お兄さんからの許可が出たようですよ。しばらくの間ここに留まってもいいそうです」
具合がよくなるまでだって言ったじゃないか。しばらくの間なんて言ってない。
アオの心の中の突っ込みが聞こえるはずもなく、カイルは普段は厳めしく見える表情をどこかほっとしたようにゆるめて、「だったら専用の部屋を用意しないといけませんね」と言った。
リコの瞳が、いったいどうなってるの? とアオに問いかける。アオは肩をすくめた。そんなこと、アオのほうが知りたい。
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