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 屋敷は広く、外から見たらまるで小さなお城かホテルのようだと思ったその内部は、案外現代的だった。シンプルな家具は趣味がよく洗練されていて、居住者が居心地よく過ごせるようさりげなく配置されている。きっとそのどれもが値段を聞いたら目玉が飛び出るほど高価なものなのだろう。  アオたちのゲストルームは東側にあって、窓からは広大な庭がよく見えた。  驚いたことに、カイルの話とは、リコがカイルの”運命のつがい”の相手だということだ。カイルはひとめリコを目にして、そのことに気がついたのだという。リコが何も気づかないのは、おそらく発情期前だからだろうとの話だ。そのとき、「まさか”運命のつがい”がこんなに高い確率であるなんて・・・・・・」と独り言のように呟いたカイルの言葉の意味はよくわからなかった。  カイルからその話を聞いたとき、アオは正直戸惑った。果たしてそれがよいことなのか、それとも悪いことなのか、とっさに判断できなかったからだ。  最初は二、三日のはずであった滞在は三、四日に延び、気がつけば一週間にまで延びていた。その間、アオたちは大切な客人として扱われたが、使用人たちの儀礼的な態度からみても、その存在が望まれていないことは伝わってきた(唯一の例外があるとしたら、カイルくらいだ)。カイルの目が届かないところで、アオはときどき使用人たちから嫌がらせを受けることがあったーーそれは、アオのティーカップにだけ砂糖の代わり塩が入っていたり、誰も見ていないところでチクリと嫌みを言われたりするくらいの、ほんの些細なものだ。正直よい気持ちはしないが、彼らの面白くない気持ちがわかるだけに、アオは告げ口をしなかった。
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