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 アオの言葉に、サーシャは「あちゃー」という顔になった。気の毒そうな目でアオたちを見るが、彼女に何もできないのは、お互いにわかっていた。 「その知り合いの人には頼れないのかい? しばらく世話になったんだろ?」  アオはうつむき、首を振った。 「・・・・・・知り合いと言っても、俺たちとは何も関係ない人たちだから」 「うちもねえ、余裕があるわけじゃないからねえ・・・・・・」  サーシャもまた、アオたちとはただ近所に住んでいる他人にすぎない。それでも寒空の下、アオたち兄弟を見捨てて部屋に戻るのは気が咎めるのか、その場を立ち去るそぶりは見せなかった。 「・・・・・・あの、俺これから大家さんのところにいって何とかしてもらえないか頼んでくるので、それまでの間だけでもリコを預かってもらえませんか?」 「アオ! 大家さんのところへいくなら、俺もいくよ!」 「リコはいいから、サーシャさんの家で待ってて」  恐らく話し合いは居心地のいいものにはならないだろう。リコは不満の声を漏らしたけれど、アオは聞かなかった。 「もちろんそれぐらいならうちは構わないがねえ。頼んだところであのごうつくばりがどうにかなるかねえ・・・・・・」  心配そうなサーシャに、アオは「大丈夫、何とかします」と無理矢理笑みをつくった。サーシャはちらっとアオを見ると、ちょっと待ってな、と言って一度家の中に入り、再び戻ってきた。 「これ。少ないけどね。ないよりはましだろ?」  そう言って手のひらに握らされたのは、わずかだがサーシャの家にとっても大事な金だった。アオはぎゅっと唇を噛みしめた。胸が苦しくなる。 「・・・・・・すみません、本当に。このお金は、絶対に返しますから」  深く頭を下げると、サーシャは急に自分のしたことが恥ずかしくなったのか、アオの背中を力強くたたいた。 「そんなに頭を下げられるほどたいした金額じゃないよ、いいから早くいってきな。リコはうちで預かっておくからね、心配しなさんな」 「はい」  アオは笑みを浮かべた。  そうはいうものの、決してアオにも何か当てがあるわけではなかった。
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