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 目の前で勢いよくドアが閉じられる。アオはほっとして、その場に膝をつきそうになった。  よかった、これでとりあえずは首の皮一枚つながった。  けれど、これはただの気休めにすぎなかった。期日までに金が用意できなければ、アオたちは今度こそ追い出されてしまうだろう。  金だ。金がいる。アオたちがここに住めるだけの金がすぐにでも。アオはぎゅっと唇を噛みしめた。  次にアオが向かったのは、前に勤めていた工場だった。一週間前に、仕事を首になったばかりの敷地内に足を踏み入れると、作業員の中には見知った顔もあって、こいつ何しにきたんだ? という顔をアオに向けてきたが、すぐに興味を失ったように作業に戻った。  案外すんなり工場内に入れたことに内心ほっとしながら、アオはベルトコンベアの横を通り過ぎ、まっすぐに事務所へと向かう。デスクで何か書類作業をしていた工場長は、室内に入ってきたアオの姿を見るなり、ぎょっとしたような顔をした。 「な、な、な、お前何しにきたんだ! 首にしたはずだろう! いったい何の用だ!?」 「未払いの給料を受け取りにきた」 「はっ! 何バカなこと言ってる!? お前に払うものなんか何もない! さっさと帰れ・・・・・・っ!?」  工場長は、手元にあった薄い雑誌をアオに投げつけた。雑誌はアオの胸のあたりにぶつかって、バサリと床に落ちた。 「先月の給料で未払いの分があるはずだ。それから、今月も首になるまでの一週間分が」 「そんなものはない! お前に払う金などない! いいからさっさと帰れ! 通報されたいか!」 「・・・・・・いいのかよ、そんなことを言って」  アオは工場長から目をそらさず、わざと口元に薄い笑みを浮かべた。 「な、な、何がだ。一体何を言っている・・・・・・」  工場長は一歩も引く気配のないアオの迫力に呑まれたようだった。 「あんたさ、オメガの存在を嫌悪しているくせに、よく俺のこと嫌らしい目で見てたよな? それどころかこっちが我慢しているのをいいことに、好き勝手なことしてくれたよな?」
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