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 三日三晩アオはうなされるほどに苦しんだ。意識が混濁するなか、ときどきふっと眠りから覚めることがあって、そのたびにリコがアオの手をぎゅっと握りしめてくれた。 「アオ、大丈夫? 苦しい? 何かほしいものある?」  アオは頭を振ると、再びすうっと吸い込まれるように眠りへと落ちていった。  四日目の朝、目が覚めるとほんの少しだけ身体は楽になっていた。顔を横に傾けると、リコがアオの手を握りしめたまま、すうすうと規則正しい寝息をたてていた。  リコを起こさないよう、アオはわずかに上半身を起こした。とたんにくらりと目眩して、ほとんど何も入っていない空っぽの胃の中から、ぐっとせり上がるものがあった。アオは何度も唾を飲み込んで、それをこらえた。そうしてようやく吐き気が落ち着くと、リコの肩にかかっていた毛布がずり落ちそうになっているのを、そっと手で直した。  パチリ、と微かに木の爆ぜる音がした。夜明け間際のこの時間、気温はぐっと下がっているはずなのに、暖炉に火が入っているせいか、室内は心地よい温度に保たれていた。   周囲のようすを窺うまでもなく、アオはここがシオンの屋敷であることに気がついていた。部屋の間取りも調度品も、確かに見覚えがある。ここは、以前滞在したときと同じ部屋だ。  どうしてここに、と疑問の余地はなかった。倒れる前のことはうっすらとだが覚えている。街中で突然発情期がきてしまって、危ないところをまたシオンに助けられたのだ。シオンの顔を見た瞬間、なぜだか安心してしまって、そのあとの記憶はあまり定かではないが・・・・・・。
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