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リコはそんなアオの気持ちを見透かしたように、イスの上でお尻をもじもじとさせていた。
「あ、あのね、シオンとカイルはアルファだから、この部屋に入るのは危険なんだって。本当はふたりもアオのことを心配していたんだよ?」
リコから気を遣われていることがわかって、アオは申し訳ない気持ちになった。
「特効薬って、普通の抑制剤よりも強いんだね。こんなに具合が悪そうなアオ見たの初めてで、何度かお医者さんが診てくれたときに、大丈夫だからって言われても、ずっと意識が戻らないから、すごく怖かった・・・・・・」
リコはふっと顔を曇らせると、アオの手をぎゅっと握りしめた。
「ずっと・・・・・・? ・・・・・・ずっとって、いま何日だ?」
アオはハッとなった。
倒れてからすでに三日も経っているとリコから聞き、アオは真っ青になった。
「仕事・・・・・・っ!」
ようやく苦労して見つけた仕事なのに、三日間も無断欠勤したら間違いなく首になってしまう。
慌てるアオに、リコは平然とした顔をしていた。
「大丈夫、目が覚めたらアオがきっとそう言うだろうって、カイルが連絡をしてくれたよ」
「カイルが?」
「うん」
リコの言葉に、アオはほっとした。
「本当は、アオは別の仕事をついたほうがいいって・・・・・・。俺もそう思うけど・・・・・・」
リコが言いづらそうに、もごもごっと口ごもる。
確かにアオの勤める職場がどこなのかは、リコに聞けば簡単にわかることだ。けれど、たかが一人のオメガの仕事がどうなろうと、カイルには関係のない話だ。細やかな気遣いを見せてくれたことに、アオは感謝していた。一見怖そうに見えるあの男が、実際は人が好く、アルファらしい傲慢なところが一切ないことに、アオはとっくに気づいていた。そんな相手がリコのつがいの相手であることに、アオは感謝するべきなのだろう。
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