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 アオは、にわかにリコがこの状況についてどう思っているのか気になってきた。この状況とはつまり、自分たちがシオンの屋敷で世話になっていることだ。普通だったら何の関係もない赤の他人であるアオたちに、彼らがここまでする理由はない。  リコは、カイルが自分のつがいの相手であることを、まだ告げられてはいないようだった。仮にその事実を知ったとき、リコはどんなふうに感じるのだろう。否応なしに自分に降りかかる運命を、果たして受け入れることができるのだろうか。 「あ、あのさ、リコはカイルのこと、どう思う?」  アオとしては、リコがカイルに対してどんな印象を持っているのか訊ねたつもりだった。ところがリコは、なんでそんなことを訊くんだろうと一瞬きょとんとした顔をしてから、 「カイルって、たぶんだけど、俺のこと好きだよね。ねえ、アオもそう思わなかった?」  あっけらかんと訊くので、アオはびっくりした。 「えっ! す、好き、好きって・・・・・・、どうして思うんだ・・・・・・!?」  思わず動揺するアオに、リコは目をまん丸くしてから、おかしそうにくすくすと笑った。 「だって、一見表情は変わってないように見えるけど、俺と話をしているとすごくうれしそうなんだもん。やけにじっと人の顔見てることもあるし。こっちが何も頼んでいないのに、あれこれ気をまわしてくれるのは助かるけどさ。正直、アルファっぽくはないよね、あの人。なんていったっけ、もうひとりの人・・・・・・そうだシオンだ! あの人はもろに偉そうで、アルファって感じだったけどさ」  リコの口からシオンの名前が出てきて、アオはどきっとした。けれどいまはそんなことはどうでもいいのだと、アオはすぐに考え直した。それよりもリコだ。思ってもみなかった弟の姿に、アオは驚きのあまり言葉も出てこない。  リコって、こういうやつだったか・・・・・・?  思わずじっと眺めると、アオの視線に気がついたリコが、気まずそうにもじもじとした。 「・・・・・・だって、これまでずっと俺はアオにとって足手まといだったから。アオが俺のことを守ってくれているみたいに、俺だってアオのために何かしたいと思ってた。カイルが本当に俺のことが好きで、それがアオの役に立つなら、俺はいくらだってカイルに媚びてやる。カイルを利用してやる。そんなことなんてことない・・・・・・!」 「リコ・・・・・・!」
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