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アオはぎょっとした。目を大きく見開き、茫然とリコの顔を見つめる。
瞳に思いつめたような昏い光を滲ませ、引き攣ったような笑みを浮かべるリコは、けれどまるで泣くのを我慢している子どものような途方に暮れた顔をしていた。
アオは唇を引き締めた。リコに、弟にこんな表情をさせているのは自分だと思った。
「リコ」
もう一度その名前を呼ぶと、アオを見たリコの瞳が迷うように揺れた。
「こっちへきて」
手を差し伸べると、最初は躊躇うように、けれど必死にその手を握り返してきた。アオを見つめるリコの瞳の奥に、微かな不安が見え隠れする。その昏い光を見た瞬間、アオの胸はぎゅっと痛んだ。胸に感じた痛みをリコには悟られないよう、アオはそっと深呼吸した。
「リコは足手まといなんかじゃない。一度だって、そんな風に思ったことなんてない」
リコの瞳に、縋るような光が浮かぶ。その光は、アオの言葉を信じたい、と必死に告げていた。
「アオ・・・・・・」
・・・・・・ほんとに?
言葉にならないリコの声が聞こえるようだった。アオはにっこりと笑った。心細そうに自分の手を握り返すリコの手に、そっと力を込める。
「本当に」
ーーうそつき。
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