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 深い闇の底から、ねっとりとアオに囁きかける声がする。その声は、本当に一度もそんなふうに思ったことはなかったか、とアオに問いかける。 「リコ、聞いて? リコは足手まといなんかじゃない。俺の、大切な弟だ。たったひとりの、大事な家族だ。だから、そんなことこれっぽっちだって考えちゃいけない。人の気持ちを利用するなんて言ったらだめだ」  リコがきゅっと唇を噛みしめる。  その瞳には、だけど・・・・・・、というリコの逡巡が見えるようだった。本来のリコは素直な性質だが、ときどきこうやって強情な部分を覗かせることがある弟に、アオはふっと瞳をゆるめた。 「俺は、リコがいてくれてよかったよ。お前の存在が、俺や、父さんや母さんにとって、どんなに大切だったかわかるか? 大好きだよ、リコ。俺は、誰よりもお前に幸せになってほしいんだ」 「アオ・・・・・・」  リコは握っていた手を離すと、アオの首にぎゅっと抱きついてきた。柔らかいリコの髪の毛が、アオの頬のあたりをくすぐる。子どもの頃から、何度自分たち兄弟はこうやって互いを慰め合ってきただろう。  ほっとしたように自分に甘えるリコの背中を、アオは慰めるようにぽんぽんと軽くたたいた。
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