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 アオは大きく目を見開いた。シオンが自分のために走る姿なんて想像がつかなかった。頬がじわっと熱くなる。慌てて普段の自分を取り戻そうとするが、果たしてそれがうまくできたか、アオには自信がなかった。 「アオ?」  案の定、リコが不思議そうに眉を顰める。 「そ、それであいつは・・・・・・? できたら一言あいつにも礼が言いたいんだが・・・・・・」  そうだ、何もあいつに会いたいからじゃない。俺は助けてもらった礼を言いたいだけだ。  なぜか自分に言い訳をするように納得すると、カイルが申し訳なさそうな表情でこちらを見ていて、アオは気づいてしまった。  そうか。あいつは俺に会いたくないんだ。  ひとりで勝手に熱くなっていた心が、すっと冷える。 「シオンは、あなたを邪魔に思っているわけじゃないんです。そうだったら最初から助けません。ただ、シオンにもいろいろと言えない事情があって・・・・・・」 「わかってる。無理を言ってすまなかった。ここまでしてもらっただけで充分すぎるくらいだ。あんたたちには関係ないのに」  カイルの言葉を、アオは遮った。シオンがアオを邪魔に思っていないというのは、アオを傷つけないための、カイルのやさしい嘘だと気づいていた。
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