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 アオは、ベータ同士の両親から生まれた、いわゆる「鬼っ子」というやつだ。通常、ベータ同士の親から生まれる子どもは、高確率でベータだ。アオが生まれたとき、もともと私生児である母との結婚をあまりよく思っていなかった父の両親は、父に母と別れ、良いところの娘と再婚するよう勧めたという。  ーーお前なんて生まれてこなければよかったのに!  両親を不慮の事故で亡くしたとき、アオは病院へ駆けつけてきた父の両親に初めて会った。幼いリコを抱えてショックで茫然とするアオに向かって、祖父母は憎しみのこもった言葉を投げつけた。それは呪詛だった。  祖父母は父の遺体だけを引き取ると、アオたちが葬儀に参加することはもちろん、それ以降、一切の関係を絶った。父が眠る墓の場所さえ教えてはくれなかった。母の遺体は、市営の集団墓地へと埋葬された。単独の墓を建ててあげられるだけの余裕はアオたち兄弟にはなかったのだ。  葬儀の日は、雨が降っていた。  ーーアオ? アオ、だいじょうぶ?  アオとつないだ手と反対側のリコの手には、野原で摘んだ花が握りしめられている。声を殺して泣くアオを見て、リコがぐしゃりと顔を歪めた。  ーーアオ。泣かないで。アオはぼくが守るから。アオ・・・・・・。  しまいには堪えきれずに泣き出してしまったリコの身体を、アオはぎゅっと抱きしめた。
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