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 足下の小枝を踏むパシッ、という音で、アオはハッと我に返った。  冬枯れの庭は花や緑などの色味が少ないため、寒々しく見える。アオは庭に置かれたベンチに腰を下ろすと、薄青い空を見上げた。  ずいぶん懐かしいことを思い出したものだ・・・・・・。  両親が生きていたころのことなんて、いまでは遠い記憶だった。  衝撃の告白を聞いた後、混乱したアオは、少し考えさせてほしいとカイルに頼んだ。ひとりになって考えたいというアオの気持ちを考慮して、カイルは気分転換に、と散歩を勧めてくれた。  アオは、病み上がりに身体が冷えないようにと、わざわざカイルが持たせてくれたステンレスボトルの蓋を開けた。熱い紅茶をすすりながら、あいつまだ若いのに気が利きすぎだろうと、こんなときなのにおかしくなった。  雲がゆっくりと流れてゆく。こんなにゆったりした時間を過ごすのは、いつ以来のことだろうか。  カイルから、シオンが”運命のつがい”の相手であるという話を聞いたとき、まずアオが感じたのはわき上がるような純粋な喜びだった。それからすぐに冷たく自分を見下ろすシオンの顔を思い出し、冷や水を浴びせられたような気持ちになった。  あいつが”運命のつがい”であるわけない。  少なくとも、シオンがそれを望んでいないことは確かだ。  そう思った瞬間、自分がずーんと闇に沈み込んでいくみたいに、ひどく寒々しい気持ちになった。  「ははっ。俺、何を期待してたんだろ」  おとぎ話なんて、そんなものあるわけないって、とっくにわかっていたはずなのに。  最初から最悪の出会いだった。お互いに印象は最悪で、住む世界も違う。本当だったら、ほんの一瞬、すれ違っただけで終わっていた。
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