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アオは目をそらし、ははっ、と笑った。
「ほら、俺ってば、男がいないと駄目なオメガだからさ」
アオの目の端に、シオンが何かを言い返そうとしたのが映った、そのときだった。
「シオン、だれ?」
少女がシオンの腕にそっと指をかけた。まっすぐな瞳と合った瞬間、アオはドキッとした。間近で見ても、息を呑むほどに美しい少女だった。少女といっても、年齢はアオと同じくらいだろうか。ダークブラウンの髪の毛を胸のあたりまで伸ばし、まっすぐにアオを見つめる少女の瞳の色は、柔らかな茶色だ。そして少女は、アオと同じオメガだった。
「あなたは? シオンのお友だち?」
「あ、あの、俺は・・・・・・」
「マリア。こいつは何でもない」
シオンがアオと少女の間に割って入る。ふたりはお似合いだった。シオンと少女が並んだ姿は、まるで完璧な一組のカップルように絵になった。
「シオン?」
自分から少女を守るようなシオンの仕草に内心傷つきながらも、アオは別にそんなに必死にならなくたって何もしやしねえよ、と捻くれた気持ちになった。
「でも、おにいちゃんがシオンにお客さまがきているって」
「おにいちゃん?」
アオは拗ねていたのも忘れて、思わず反応してしまった。
「うん。おにいちゃんはカイルっていうの。あなた、知ってる?」
「えっ!? カイルの妹って、マジかっ! 全然似てねーじゃんっ!」
驚きのあまり、遠慮も忘れて声を上げたアオに、シオンは不快そうに眉を顰めたが、マリアと呼ばれた少女はおかしそうにくすくすと笑った。
「そんなに似てない?」
「全然似てねえよ! 月とスッポンくらいに違うじゃん! ・・・・・・いや、あいつがいいやつだってのはわかってるけど、ほら、見た目がさ・・・・・・」
「見た目はちょっとこわいのよね、おにいちゃん」
「そうそう!」
すっかり初対面の少女と意気投合しながら、アオはさっきから違和感があった。少女の見た目はアオと同い歳くらいに見えるのに、少女が話をしている声だけ聞いていると、まるで幼い少女を相手に話をしているような気持ちになるのだ。例えるなら、十歳かそこらのときのリコを相手に話をしているようだ。
「マリア。もういいだろう。あまり長く外にいるとまた体調を壊すぞ」
シオンが少女の肩にそっと手を置いた。それを目にしたとたん、アオの胸は再びずきん、と痛んだ。
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