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気のせいか、さっきよりもシオンの表情に不機嫌さが増している気がする。
アオはどきどきした。アオは普段、自分の気持ちを伝えることに慣れてはいない。リコ以外、これまで自分の話を聞いてくれる人などいなかったからだ。なんて説明したら伝わるだろう。焦れば焦るほど頭の中は真っ白になり、じっと見つめられて、顔がかあっと熱くなった。
「ほんとになんでもいいんだよ。俺、学歴もないし、頭もあんまよくないからさ、言ってもできることなんて限られてるかもしれない。でも、汚れ仕事なら慣れてる。俺が言ってもきっとだめだ。できればあんたから言ってもらえないかな・・・・・・?」
アオは、さっきから無言でいるシオンが気になった。アオが顔色を窺うようにちらっと見ると、じっと何かを考えていたらしいシオンは小さく呼吸を吐いた。
「仕事がないと居づらいというわけか」
「う、うん。そうなんだよ!」
自分の言っていることがシオンに伝わって、アオはほっとした。
だけど、わかった、とシオンから短い返答が返ってきたとき、アオはきょとんとした。
「えっ?」
いま何て・・・・・・?
すでに歩き始めていたシオンが足を止め、振り返る。
「だからわかったと言ったんだ。お前に何か仕事を与えるよう、カイルに言っておく」
まだ何か? というシオンの瞳に、アオはぶんぶんと頭を振った。
「あっ、ありがとう!」
すでに歩き始めているシオンの背中を眺めながら、アオは胸が沸き立つような、切ないような、自分でもどうしていいかわからない気持ちになった。
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