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 気持ちを自覚したからといって、何が変わるわけではなかった。シオンは相変わらずアオを避けているようで、あの夜のように偶然出くわすといったこともなかった。  アオは、初めて抱いた恋心を、「なかったもの」として処理した。そうしていると、実際にアオ自身も気のせいだと思えるようになった。  カイルとの勉強会が始まって以来、すっかり明るさを取り戻したリコの瞳に、これまでにはなかった自信や明確な意志というものが、見られるようになった。同時に、カイルとの仲もうまくいっているようだった。いまはまだリコが幼いせいか、彼らの間に恋愛感情があるようには感じられなかったが、以前からの知り合いのように仲良く肩を寄せ合っているふたりの姿は、見ていて微笑ましかった。アオはほっと胸を撫で下ろした。リコが幸せそうに笑っていられるなら、それが一番だ。心の中にほんの少しだけ寂しさも感じたが、この際自分の気持ちはどうでもいい。  アオは、そろそろ自分は家へ戻ろうかと考えていた。カイルは、このままアオたち兄弟が屋敷に滞在していてくれて構わないのだという。仕事も、できるならば変えてほしいと。そしてそれはシオンの意志でもあると。  アオはカイルの気持ちをありがたく思いつつも、彼の話自体は懐疑的に受け止めていた。なぜなら、シオンがアオと積極的に関わりを持ちたいはずはないからだ。ただ、シオンが自分の目の届かないところで、アオが面倒な目に巻き込まれることを望んでいないのもまた事実であるようだった。おそらくそれは例の”運命のつがい”とやらが理由だろう。ほかに考えようがない。   本当は俺のことなんかどうだっていいくせに。
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