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シオンはアオを抱き抱えたまま、バスルームから出ると、そのままベッドのほうへといった。アオはドキドキした。いったい何が起こっているのだろう。
ベッドに下ろされ、バスタオルで濡れた身体を拭われる。それから髪を。
明らかに慣れていない不器用な手つきに、アオの胸に愛しさがこみ上げた。
「貸して」
アオはシオンの手からバスタオルを奪うと、彼の身体を拭った。それからドキドキしながら手をそうっと伸ばして、これまでずっと触れてみたいと思っていたシオンの髪に触れる。間接照明の柔らかな明かりに浮かび上がるシオンの濡れ髪は、いつもよりも色が濃く見えた。シオンは目を閉じて、大人しくアオのされるがままになっている。
ふいにシオンの長い睫毛が持ち上がり、ハッとするような青い瞳が覗いた。
「あ・・・・・・っ」
噛みつくような激しいキスをされ、そのまま勢いよくベッドに倒れこむ。アオの身体の上で上半身だけを起こしたシオンが、ぶるりと身震いをした。そのとき、シオンはアオの首筋に噛みつこうとした。
「シオン、だめだ・・・・・・っ!」
アオの悲鳴に、シオンは弾かれたように身体を上げた。まるで自分のしようとしていたことに気づいたように、その瞳は大きく見開かれ、愕然とした表情を浮かべている。アオは淡くほほ笑みながら、悲しい気持ちでそれを眺めた。
これできっともうおしまいだ。
傷ついた心を見られまいと、アオは顔をそらした。そのまま身体を起こし、ベッドから下りようとした。
突然シオンの手がアオの後頭部を包み込み、自分の身体のほうへ引き寄せるようにキスをした。それはさっきとは違う、やさしいキスだった。まるで好きな相手にだけするような、特別なーー。
そんなことあり得ないとわかっているのに、アオは勘違いをしそうになる。
「・・・・・・っ!」
気がつけば、アオは静かに涙を流していた。
シオンのことが好きすぎて、胸が痛い。こんなに好きになるつもりなんてなかったのに。
シオンはいったん身体を離すと、指でアオの涙を拭った。
「・・・・・・なぜ泣く?」
シオンは、ひどく戸惑った表情を浮かべていた。アオがなぜ泣いているのかわからないのだ。
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