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胸が詰まるような歓喜に、アオはいまこの瞬間に時が止まってもいいとさえ思った。セックスは身体だけではなく、心までを満たすものなのだと、シオンと身体を重ねて、アオは初めて知った。
そのとき、ぶるりとシオンが身震いした。自分の中で放った後、シオンはアオの隣に横たわった。シオンの胸が呼吸に合わせて大きく上下する。行為が終わったいま、アオはすぐに出ていけと言われるだろうと、ベッドの端でわずかに身体を固くさせた。
「なんでそんな端にいる」
抱き寄せるようにして、その身体を包まれる。上からふわりと毛布をかぶせられて、アオは目を瞠った。
「・・・・・・さっき、お前は、自分は必要な人間じゃないと言った。誰にも必要とされていないのだと」
どうしたのだろう。シオンは何が言いたいのだろう。
いきなり話し始めたシオンに、アオは彼の意図がわからず戸惑う。
「アオとは、ハワイ語で”光”とか”夜明け”、”世界”の意味だ。お前の肌は浅黒い。それはそっちのほうの血が混じっているからじゃないのか? だとしたら、お前の両親にとって、お前は世界そのものだったんじゃないのか? そんなお前が不必要な人間であるはずはない。お前はちゃんと望まれてこの世に生まれた。愛されていたはずじゃないのか」
アオは目を見開いたまま、一言も口を開くことができなかった。震える唇を、嗚咽が漏れないよう噛みしめる。
頬を涙が伝い落ちる。
もういい、とアオは思った。もう充分だ。シオンの腕の中で、アオはぎゅっと目をつむった。
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