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「きのうのことだが・・・・・・」
「それさ、気にしなくていいよ」
「え?」
「あんたが俺と寝たのは、くそフェロモンのせいだろ?」
アオは、にっと笑った。
「・・・・・・アオ?」
アオの急激な変化に、シオンは戸惑っているようだった。
とくん、とくんと胸が鳴る。バスローブの帯をキュッと前で縛り、アオはさりげなさを装って振り返った。
大丈夫だ、気づかれるような真似はしない。
アオはシオンのいるほうに近づくと、片膝をベッドに乗せた。
「まあさ、ベッドの相性はまずまずだったから、また気が向いたら相手をしてやってもいいけど」
シオンの胸に右手をついて、思わせぶりにするりと撫でると、シオンは不快そうに眉を顰めた。
「・・・・・・それはこういうことが珍しくないということか」
手をきつくつかまれる。明らかに怒りを含んだ声に、アオの胸はぎゅっと痛んだ。
「まあ、だってほら、俺、これまで平気で身体を売ってたオメガだし? いまさら恋愛もする気ねえし」
へらへらと笑みを浮かべると、シオンがつかんでいた手を離した。
「最低だな」
胸にぽっかりと穴が空いた。アオはふいっと顔をそらすと、ベッドに乗せた膝を下ろした。
「そ。俺、最低なの」
だからあんたは何も気にしなくていいよ。
シオンはそれ以上何も言わなかった。
アオは汚れた服を拾い上げると、シオンの部屋を出た。ドアが閉じた瞬間、ちょっとだけ泣けた。アオはゴシと瞼を拭うと、長い廊下を自分の部屋へと戻った。
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