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 ”運命のつがい”。  アオが初めてその言葉を聞いたのは、いつのことだろう。おそらくアオが無邪気な子どもでいられたとき。アオにはまだ両親がいて、リコなんかもまだ本当に小さくて、目の中に入れても痛くないくらい、かわいかったころのことだ。  ーーいい、アオ。この世界のどこかにはね、みんなそれぞれ”運命のつがい”が存在しているの。その人に出会った瞬間にね、わかるんだそうよ。ああ、この人が自分の運命の相手なんだって。  安心できる母の膝の上で、アオはやさしく髪を撫でる感触に目を細めた。  だったらぼくにも運命のつがいがいるの?  わくわくしながら訊ねたアオに、母は、ふふっと笑って、いるわよと答えてくれた。いつかきっとアオは運命のつがいの相手に出会って、必ず幸せになれるわ、と。  幼いアオは、純粋に母の言葉を信じた。それがどんなに難しいことかは知らず、いつか自分の運命のつがいに会えるのだと夢見ていた。
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