515人が本棚に入れています
本棚に追加
/203ページ
「…。…魔法見たことないって言ってなかったか?」
「ツェーザルは息をするのにお手本が必要なのか?」
「竜だって親に教えてもらうのが普通だぞ?つくづくよく分からん兎だな」
なにか考えていたツェーザルだったが、次に亜竜が現れると、こう言った。
「次は水で倒してみろ」
「ふぬ!」
「首を一撃か…」
「お?亜竜どもがいっぱい出てきたのだな」
「縄張りだったのかもな。都合がいい、ひと通り試してみるか」
わたしはツェーザルの指示通りに魔法を使った。
火でこんがり焼いたり、風の刃で切り刻んだり、雷を落としたり、木を生やして締め殺したり、氷の柱をぶっ刺したり。
亜竜を一掃してまわりを見ると、地形が変わっていた。
魔法ってキケンなのだな。
「光と闇はまわりの被害が甚大になるから今はやめておくか。
しかし、この分だと全部の属性が使えるんじゃないか?末恐ろしいな」
「ヴァイスが魔法を使えたらご主人は喜んでくれるか?」
「ご主人?って誰だ?」
「ご主人はご主人なのだ!ヴァイスの飼い主で、竜の巣にヴァイスが行く直前まで一緒だったぞ!」
わたしの答えは予想外だったのか、ツェーザルは開いている片目をパチパチと瞬かせた。
「お前、誰かに飼われてたのか?竜の巣に行く直前っつったが、竜の巣の前はどこにいたんだ?」
「む?むーん…ご主人の家の近くである!」
「竜の巣からそのご主人とやらの家は離れてるのか?」
「たぶんめっちゃ遠いぞ!」
ツェーザルは眉をひそめた。
人間の顔はほぼ見分けがつかぬが、ツェーザルは髪が紫だし目も赤いし傷跡もあるし、特徴盛り沢山なので分かりやすい。
分かりやすいのはいいことだ。
「転移が暴発したのか?…いや、人間に転移を使える奴はいなかったはず…」
「そんなことより、腹が減ったのだ!人参を所望する!」
「おチビ…お前、見た目通りの脳みそだな。喋れてるのが奇跡だ」
「どういう意味かッッ!」
最初のコメントを投稿しよう!